内容紹介
知らない町で少年は出逢った――伝えたい、「あの日」の奇跡。
時空を超えた小さな奇跡と一滴の希望を描く感涙の傑作小説集。第143回直木賞候補作、待望の文庫化。
「どんな人生にも必ず分岐点となる瞬間が存在するように思う。運命的な避けることのできない『あの日』もあれば、ほんの僅かなタイミングの違いでその後が揺らぐ『あのとき』もあるだろう。そのポイントにかえることができたら。いくことがかなうなら――。もしも拙作を手にとって読んでくださる方がいるとするならば、ほんの少しでもいい、その方の『あの日』『あのとき』に対する思いに寄り添えたらと願う。」乾ルカ(「月刊ジェイ・ノベル」2010年6月号より)
「乾さんが小説を書こうと決めた『あの日』があって、本当によかった」瀧井朝世(解説より)
目次
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【収録作品】
■真夏の動物園
いじめられっ子の少年が、両親に怒られたことに傷つき、
深夜、家出をして迷い込んだのは、彼の知らない動物園だった。
そこで出会った飼育員に教えられたこととは――。
■翔る少年
激しい地震に遭った翌日、少年は見たこともない町に立っていた。
中年女性に傷の手当を受け、親に迎えにきてもらうまでの間に
体験したのは、彼がやってみたかったことばかりで……。
■あの日にかえりたい
施設で会った80歳の老人は、介護士の卵でボランティアにきていた私だけには心を開いてくれた。
彼が語る、嘘のような失敗続きの人生は本当の話なのか。
そして、彼が「あの日にかえりたい」と呟いた「あの日」の出来事とは――。
■へび玉
15年後にここでまた会おう、と約束した高校時代のソフトボール部の仲間たち。
その当日、約束の場所にやってきたのは33歳になった私ひとりだった。
あの時遊んだ花火をつけた瞬間に現われたのは――。
■did not finish
ピークを過ぎ、同情さえ買いながらも現役を続けているプロスキーヤーが、
ワールドカップでの激突事故の瞬間に見た男の正体とは――?
■夜、あるく
春の雪降る夜、ハクモクレンの木の下で出会った老女。
老女はなぜか雪の季節の夜だけ散歩をしていた。その理由とは――?