佛淵孝夫学長
国立大学法人佐賀大学学長(医学博士)・教育再生実行会議(第2分科会)有識者メンバー。

大学版IRの導入と活用の実際

2015.02.13

全国の大学から問い合わせが殺到。大学におけるIRの導入と活用法を
カリスマ学長先生がやさしく、ていねいに解説する。

佛淵学長からの一言
佐賀大学は、平成15年10月1日に旧佐賀大学と佐賀医科大学が統合し、5学部(文化教育、経済、医、理工、農)及び海洋エネルギー研究センターなどの複数の研究センターからなる総合大学です。

現在、国立大学法人をとりまく情勢は、大変厳しいものがあり、新たな再編統合や国立大学改革が望まれている中、佐賀大学としては、大学改革実行プランの公表を契機に、課題解決と本学の特色・強みを強化し、情報を発信しながら、佐賀の地域に必要とされる「佐賀の大学」を目指すことが求められていると考え、我々は、COC構想に重点を置きながら改革を進めていく、いわゆる「佐賀大学改革プラン」をまさに策定し、随時実行に移しています。

これらの活動が確実に遂行されるために情報提供機能や影響機能を持った、経営戦略に必要なPDCA遂行のための支援組織として、インスティテューショナル・リサーチ室(IR室)を設置し、大学の三つの使命であります教育、研究、社会貢献について、全学的・組織的に取り組んでいます。

私たちの新しい取り組みをぜひ参考にして、あなたの大学でのIR導入と活用の参考にしてください。

大学版IRとは?
IRという略語をこの著書ではInstitutional Research(機関調査)の意味で用いるが、我が国におけるこの語彙はまだ定義として確立していないかもしれない。企業等における「IR」という略語はInvestor Relations(投資家への財務等の広報活動)として一般に普及しており、言葉の意味自体はここでお話しするものとは違う。しかし、この広報活動は「企業と金融コミュニティやその他のステークホルダーとの間に最も効果的な双方向コミュニケーションを実現するため、財務活動やコミュニケーション、マーケティング、そして証券関係法下でのコンプライアンス活動を統合した、戦略的な経営責務」と定義されているように、筆者が考えるIRはむしろInvestor Relationsに近いかもしれない。しかし、いずれにせよIRはあくまで経営のためのツールであり、経営で活用・実践されなければ単なる研究の一分野で終始することになると思うのである。(「はじめに」より)

著書紹介『大学版IRの導入と活用の実際』
大学におけるIR(インスティテューショナル・リサーチ)の導入と活用で日本の先頭をひた走る佐賀大学。佐賀大学学長であり推進者、国の教育再生実行会議(第2分科会)の有識者メンバーでもある佛淵孝夫先生が、その豊富な実践例の数々を懇切丁寧に解説する。この本には、これからIRを導入・構築しようとする全国の大学学長・教員および広くIRに関わる人々にご利用いただけるさまざまなノウハウが満載されている。少子化の時代を迎え、大学をとりまく情勢は厳しさを増している。大学改革が急がれる昨今、まさに大学関係者必携の一冊と言えよう。第1部「大学版IRの導入」、第2部「大学版IRの実際」、第3部「大学版IRの運用と活用」の理解しやすい3部構成になっている。

【目次】
第1章 なぜ今「IR」なのか
 IRとは、我々が目指すIR、我が国におけるIRの現状、IRが必要とされる理由
第2章 IRの目的と機能
 IRの導入方針と全体設計、誰に見せるデータか、情報提供機能と影響機能、
 ベンチマークの考え方、シミュレーション機能とコンサルティング機能
第3章 誰が何からどのようにIRデータを作成するのか
 データはどこにあり、だれが管理しているのか、行動と効果の測定、
 一般の大学が持っているデータとは、誰に見せるデータなのか、データの選択と分析・加工、
 見える化と見せる化、データのチェック機能、データの管理と関係規則、データの公開
第4章 インスティテューショナル・リサーチ(IR)室の構成と役割・権限
 IR室の前身、IR室をどこに置くのか、室長と室員の選考は・拡充メンバーと専門部会、IR室会議
第5章 経営基盤
 基本情報、財務データ、管理会計によるベンチマーキング、
 施設の基本情報と現状分析と施設マスタープラン、人事
第6章 教学
 学校基本調査から、入口、修学、 出口、学生支援関連、得られた効果、成果
第7章 学術
 研究業績、外部資金関連、知的財産関連、国際関係
第8章 社会貢献
 公開講座等、審議会等、産業界や各種団体等
第9章 運用の実際
 定例のIR室会議の進め方、IRデータの学内共有、その他の運用、課題
第10章 活用の実際
 定例の会議資料として、大学改革実行プランへの対応、組織改革、
 対外的な報告業務のサポート、その他の活用、課題
第11章 ガバナンス改革とIR
 理念やミッションの制定と再検証、
 マネジメントのためのガバナンスとコンプライアンス、改革実行プランとPDCA
第12章 残された課題と今後の展望
 データの収集体制とデータハウス、IR機能の活用体制、定性的IRの構築、QIシステムの構築

佐賀大学インスティテューショナル・リサーチ(IR)室
 IR室の体制(情報収集体制・専門部会)