第44回 麻将連合代表、日本健康麻将協会特別代表 井出洋介さん

卓球の福原愛ちゃんも,好きでやっているからできると思うんです。ですから大人は,子どもが好きなことが嫌いにならないような環境づくりを心がけるべきですね
史上初の二冠達成,そして真の競技プロへ
 競技プロについては,当時は「近代麻雀」という雑誌がまだ専門誌だった頃に,最強位戦というタイトル戦でAリーグとBリーグを作っていまして,そこに在籍している人たちが一応プロと言われていました。両リーグ,それぞれ十人ぐらいで計二十人ほどです。それ以外には,雑誌や新聞に麻雀の原稿を書いているような若干のフリープロがいて,合わせてだいたい三十人ぐらいいました。それが,現在は一応「○○プロ」と呼ばれる人が所属している団体が六つもあります。しかも,CリーグやDリーグまで作っているところもありますから,そういうところも全部ひっくるめると競技プロは何百人という数になるんですよ。ただ,私はそういう団体とは一線を引きたいと思っています。たとえば「麻雀」ではなくて「麻将」という字を使うのも差別化のためです。「麻将」とは「賭けない麻雀」という意味なんです。だから私は「麻将」を起用し,実践しています。私は麻雀のギャンブル性を認めてないわけではないんです。そうではなくて「麻将」の世界はこうありたいと願っているわけです。一般的にはギャンブル的な楽しみもあるわけで,それはそれでいいと思っているわけです。逆に,私が提唱している健全な世界を応援してくれている人もたくさんいるわけですし。けれども,競技の世界にギャンブルがあってはいけないということです。競技の意味において私は勝負を賭けるのであって,楽しみとして,レジャーとして,文化としては「麻雀」でいいと私は思っています。
 現在,競技プロの世界は確立されていないと私は判断しています。実際,それだけで生活できている人というのは,まだまだほとんどいないわけですから。私の「麻将連合」でプロとして認定している人というのは,「賭けない麻雀」を目標にしてがんばっています。競技プロになるには,ツアー選手というんですが,全国を回って大会でいい成績を収めて,なおかつ「麻将」の部分の普及活動を通じての収入を確保されている人でなければなれません。ただ強いだけだったらプロである必要はないですよね。やはり「麻将」を普及できるだけの強い人でないと。ですから道場で育成会を通して研鑽していただき,年に二回ある「ツアーライセンス取得審査」を受けてツアー選手となって活躍することが必要です。なおかつ,先ほども言ったように「麻将」普及活動を広めていかなければなりません。私を含めた六人の認定プロも,基本的な活動は「麻将」普及活動であり,それが基本的な収入で生計を担っています。
 一九八五(昭和六十)年に第十六期名人位という大きなタイトルを獲得することができました。小さなタイトルはいくつか勝っていましたが,大きなタイトルはこれが初めてでした。勝って気持ちよかったけれど,じゃあ勝ったからといって次の日からなにか世界が変わったかというと,そんなことはなくてなんにも変わらなかったんです。だから,さらに勝ち続けなければいけないし,勝ち続けなければ物を言うことができないなぁと実感しましたね。勝つことがゴールではなくて,スタートラインです。ずっと強くいてやろうと(笑)。一九九四(平成六)年に第十九期最高位を獲得して,史上初の二冠達成するまではそのことにこだわり続けていましたね。二冠を達成した時は自分の中で一つの区切りというか,それまでは言えなかった「プロとはなんぞや」という,麻雀プロや麻雀競技のあり方から始まって,自分の理想的な世界にシフトしていったというのが,さっき申し上げた「麻将連合」を立ち上げたきっかけです。


業界全体の向上をはかりたい
 一九八五年から名人位を三連覇した時に作ったのが「井出名人の実戦麻雀」というテレビゲームです。これは,インパクトがありました。その後,麻雀ゲームは定番となり,ゲームにプロの名前が入ることも定番になりました。お金が賭けられないのもいいですよね。ゲームによって,テレビ番組にも出演する機会ができ,それが今の『われめでポン!』にもつながってきたのだと思います。
 また,二冠を達成した翌年から「日本健康麻将協会」で日中健康麻雀交流が始まりました。交流が進んで,今では百パーセントではないですが,中国の体育総局が麻雀を頭脳スポーツとして認めて競技ルールを作るまでになりました。
 そうした競技面以外の,ボケ防止や頭の体操という健康麻雀の面でも見直されてきています。最近では,千葉市が健康麻雀に予算を組みました。これは行政では初めてではないでしょうか。東京都では品川区や杉並区などがすでに日本健康麻将協会とタイアップして取り組んでくれています。ただ,やっぱり私のライフワークは,競技としてのステータスをもっと上げることだと思っています。麻雀のプロの中から,たとえば将棋の羽生善治さんのようなスターが後進の人たちから生まれるようにしたいです。そのために競技者の世界を確立していきたいですね。

(構成・写真/桑田博之)
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