特集・記事
奥野宣之・川上徹也

『「読ませる」ための文章センスが身につく本』刊行記念対談 奥野宣之×川上徹也 第1回

共有する
関連ワード
文章のプロが教える「文章力をあなたの武器にする方法」1


――奥野宣之さんの本、
『「読ませる」ための文章センスが身につく本』が刊行されました。
文章力の高め方からその効果まで、
「つかむ・のせる・転がす・落とす」という
4つのステップに沿って解説します。
今日はコピーライターの川上徹也さんが遊びに来ました。
奥野さんと文章力について熱く語ります。

今、なぜ文章力が求められるのか?

川上: 奥野さんの新刊、読ませていただきました。えーと、タイトルは何でしたっけ?(笑)タイトルが決定する前にゲラで読ませていただいたもので……。

奥野: 『「読ませる」ための文章センスが身につく本』といいます。

川上: 実は、僕は、文章術本のマニアなんです。谷崎潤一郎さん、丸谷才一さんから始まって、いろいろな文章術の本を読んでいます。

奥野: そうなんですね。

川上: で、この奥野さんの新刊ですが、いやあ、すごいですね。別に対談相手だから誉めるというわけじゃなくて、僕がこれまでに読んだ文章術の本で一番役に立つ、ものすごい本だなと思いました。

奥野(照): ありがとうございます。

プロ以外でも文書力は必要?

川上: ただ、今日、奥野さんにうかがいたいことがあったんです。僕は、ビジネス書や実用書の書き手であって、そうした立場からすると、自分が実際に原稿を書くときに本書がたいへん役立つと思います。

奥野: はい。

川上: でも、みんながみんな、職業としての“書き手”であるわけではありません。そう考えると、奥野さんは今回、どういう人にあてて本書を書かれたのか興味があります。そもそも、今なぜ文書術をテーマになさったのかもうかがいたいところです。

「明文」だけでは足りない時代

奥野: 今は文章があふれている時代です。メールにしろSNSにしろ、プレスリリースにしろ企画書にしろ、みんなが発信者となり、世の中には文章がいっぱいある。

川上: ええ。

奥野: そんな中で、「てにをは」がちゃんとしている文章とか、論旨の明確な、いわゆる「明文」を書いただけでは足りないんじゃないか、という問題意識がずっとありました。

川上: (大きくうなずく)

読まれる仕掛けが必要

奥野: メールにしても企画書にしても、書くこと自体が目的ではありません。すべての文章は、読まれなければその目的を達することができない。ただ、これだけ文章があふれている時代には、「この文章には何かあるな」と読み手に思わせるようなものがないと、読んでもらえない。読んでもらえないと、いくらいいことを書いていたとしても意味がない。では、読んでもらうためにはどうすればいいのか。どんな仕掛けを組み込めばいいのか。それが本書を書くにいたった動機です。

川上: よくわかります。

エッセイを使ってビジネス文書を書く!?

奥野: 仕事で文章を書く人に向けて、読んでもらう文章を書くにはどうすればいいかを伝えたい。その手法として、プロが書いたエッセイを使っています。エッセイから学ぶというのは、僕が経験的に身につけてきたことです。

川上: エッセイを題材に使っているのが、読ませますよね。僕も、文章術の本を書いています(『読むだけであなたの仕事が変わる「強い文章力」養成講座/ ダイヤモンド社』)。その本を書いたのは、今、奥野さんがおっしゃったのとまったく同じ動機なんです。

奥野: そうなんですね。

渋谷のスクランブル交差点を思い浮かべると……

川上: 今のビジネス社会って、渋谷のスクランブル交差点みたいなものだと思います。

奥野: スクランブル交差点、ですか?

川上: 信号が青になった途端、たくさんの人が交差点をわーっと歩き出す。こうした状態って、誰もが発信者となって、情報がわーっとあふれている今の状態とそっくりだと。

奥野: (うなずく)

川上: 情報が山のようにある中で、自分が書いたものを読んでもらうのは、スクランブル交差点で人に話しかけて立ち止まらせるぐらい難しい。だから、奥野さんがおっしゃったように、本当にただの「明文」では読んでもらえません。

奥野: ええ。

わかりやすいだけでは読んでもらえない

川上: あ、ところで、「明文」というのは奥野さんの造語ですか。

奥野: いえ、フツウに業界で使っている言葉です。

川上: 業界にあるんですか(笑)。すみません、僕は知らなかったんですけど(照)。

奥野: 新聞記者はよく使いますね。

川上: ほう。奥野さんは新聞記者をなさっていたから、当時は「明文を書け」みたいにいわれたりしたんですか。

奥野: そうなんです!「明文はいい文章だ」と。「名文より明文」と記者時代にはよくいわれましたね。

川上: そうなんですね。

奥野: 新聞記事に「名文」の持つ雰囲気はいらないということです。

川上: へえ。

奥野: でも僕は、ちょっと違うんじゃないのという意識はずっと持っていました。

川上: なるほど。新聞記者時代の奥野さんは、当時は「明文」を書いていた。でも、今だとそれだけでは足りないということで、この本を書かれたのですね。

奥野: そうです。

「文章力」を身につけると何が違うのか?

川上: 「そもそも論」になりますが、なぜ文章力を身につけるのが大切なんでしょうか。

奥野: 人間は、物を考えるときには言語を使って考えます。文章を頭の中でつくったり、紙に書いたりしながら、少しずつ思考が深まっていく。だから僕は、文章力というか、「言語能力=思考力」だと思っています。

川上: ええ。

新しいことに挑戦する力

奥野: 新しいことを考えたい、今までになかった概念を創造しなきゃいけない、そういうときは言語能力がないと始まりません。これは、知的労働の時代の今に必須のことだと思います。なので、ものすごく地味な話ですが、やはり本を読んだり、自分で物を書いたりすることによって、深く思考できる人間になっていけると。それは、すべての人に必要なことです。

川上: 文章を書くことで人類は発展してきた。そんな気がします。一説には、今、世界中に言語が5000程度ある中で、文字を持つ言語は300ぐらいしかないらしいんです。文字を持つ言語、その文化圏は、一歩進んだ文明を持つ地域ともいえそうですよね。

最大の武器であり、ブースターとなる

奥野: 人間は二足歩行や火を使うといった力を持って、文明を進歩させてきました。中でも言語というのが、文明をつくるための最大のブースター(増幅器・推進装置)だったともいわれますから。

川上: そうですね。

奥野: 言語があることで、教育や文化を次の世代に伝えることができるようになった。それが進歩の要因となりますよね。


――言語力を身につけることで、思考力が培える。
文章力の重要さがわかるお話でした。
おふたりの話は、深く熱く展開していきます。


<第2回につづく>