『大研究 日本の道路120万キロ』著者・平沼義之さん
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『大研究 日本の道路120万キロ』発売記念イベントレポート

2013.04.03

3月23日に、じっぴコンパクト新書『大研究 日本の道路120万キロ』(平沼義之著)発売を記念して、東京・お台場の東京カルチャーカルチャーでトークライブ『廃道ナイト番外!! 現道も廃道もDVDも本もね!』が開催されました。

著者の平沼義之さんは「廃道」、つまり使われなくなった道路を主に扱うWEBサイト『山さ行がねが』の管理人として広く知られた方。弊社からは『廃道本』(永冨謙氏との共著、2008年)・『廃道 棄てられし道』(写真:丸田祥三氏、2010年)も刊行されています。また、『タモリ倶楽部』『ゴロウ・デラックス』などにも出演し、過去4回開催されたカルカルでの『廃道ナイト』もすべてチケット完売という人気者です。

「廃道」のイメージが強い平沼さん、過去のイベントでは繰り返し「道路が大好きで、そのひとつの表情である廃道をサイトとして扱ってきた」旨を発言されています。そこから本書ができたのですが、ほぼ同時に廃道を撮影したDVD『廃道クエスト』(日活/ 販売元:ハピネット)から発売されたので、二つの作品が発売されたコラボイベントとして開催されたのがこの『廃道ナイト番外』でした。


第一部は、平沼さん、廃道仲間の石井あつこさん、編集担当者の3人でスタート。まずは『大研究 日本の道路120万キロ』の打ち明け話から。打ち合わせ時から大幅に内容が変わったこと、本当は盛り込みたかったことの半分も入れられなかったこと、平沼さんのアイデアでどんどん内容が整理され、すっきりした4章建てになったことなどが語られます。

その中で収録できなかった、ある特殊な道路について、簡潔に「口述レポート」。自衛隊が建設し、観光道路をめざしたにも関わらず、あまりの難工事についにはきちんと供用されることのないまま閉鎖された道路を正攻法で探索したレポートです。

続いて。本書は図版や写真も多く入れたのですが、それでも新書ゆえ限界が低い。そこで、事前に『山さ行がねが』やtwitterで募られた「市町村道の自由な道路標識」を次々に披露します。国道の「おにぎり」、県道の「ヘキサ」と違い、全道路(「道路法の道路」)の8割を占める市町村道なのに、標識としての定型がない、それどころか掲出もされない。そんな奥ゆかしさを愛でつつ、第一部は終了です。

第二部はDVD『廃道クエスト』を企画・制作したオープロジェクトの大西・黒沢・山内三氏が登場。DVD『軍艦島』や著書『軍艦島全景』などもある彼らが初めて連れて行かれた廃道で感じたこととは? 道路への思い、造った人の思い、いろいろなことを感じられたようでした。詳しくはDVDをぜひ!

第三部は「道路の上で出会った残念」。道路上で「おっ!」と思ったら…という場面を集めてどんどんいきます。そして、ラスト。第一部でレポートした道路について、平沼さんが受け取ったあるメールを紹介します。それは、ある方のお父上がその道路の建設に関わっていて、子供の頃、その道路の素晴らしさを繰り返し聞かされていたこと。そして『山さ行がねが』でのレポートを偶然発見し、そこに父の名前が記されていたことに驚き、いまは放棄されたその道路が実際に素晴らしいものであると確信できたことの喜びを綴ったものでした。

しんみりしつつ、道路趣味者たちが「道路」について発信していくことの大切さを再認識し、大盛況のイベントは幕を閉じました。


ライダーやツーリングドライバー、サイクリストなどのものだった「道路趣味」は、がインターネットの普及とともに広く共有されはじめ、いまではひとつのコミュニティを形成しています。そのおもしろさは鉄道趣味のように広く、深いのです。

しかし、一般的にはまだまだ「意識」にすらのぼってきていません。なにしろ、自分の家から一歩出れば、すでに道路に入っています。空気のような存在です。だからこそ、意識すると、実にいろいろなものが目に飛び込んでくるのです。

そこに呼びかけるのが、本書『大研究 日本の道路120万キロ』です。イベントは終わりましたが、ぜひご一読いただき、毎日歩いている道路の正体を意識し、面白さを見出していただければと思います。


なお、同時に発売された『空から見える東京の道と街づくり』(竹内正浩著)は、また違った観点で道路のおもしろさを披露しています。航空写真と地形図をふんだんに掲載し、東京の「三環状九放射」を軸にして、都市計画としての道路を語ります。『大研究 日本の道路120万キロ』が道路に「国民の意識」を見るとするならば、こちらは「国家の意志」を感じます。なにしろ、関東大震災後に策定された道路計画が、いまでも着々と進められているのですから。

廃道ナイト番外!! 現道も廃道もDVDも本もね!

WEBサイト『山さ行がねが』