「費用・技術から読みとく巨大建造物の世界史」書影

費用・技術から読みとく巨大建造物の世界史

森山高至監修 ( モリヤマ タカシ )

新書判 192ページ

2016年01月06日発売

価格 880円(税込)

ISBN 978-4-408-45591-4

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万里の長城は総事業費3兆円!?

世界には、その時代時代の叡智を傾けてつくられた、歴史的に貴重な建築物が数多く存在しています。そして、それらは世界史上に登場する、さまざまな文明や国家の栄枯盛衰と密接に関係しています。
なぜなら建造物は、文明や国家の痕跡であり、建築主や設計者、直接工事に従事した労働者など、携わった人々の思惑や想いがつまっているからです。
たとえば、中国にある万里の長城や、カンボジアにある幻の都アンコール・ワットといった外見の威容ばかりに目が行きがちですが、歴史的な視点では、為政者が権威づけなどの目的でつくらせた栄華の象徴でもあります。
ただし、その裏側では国民が過度の負担で苦しむこともありました。内乱が起こったり、国が弱体化して他国から攻められたりすることがあったのも歴史的な事実です。

ちょうどこの本を制作していた2015年、東京オリンピックに向けて粛々と建設していくはずの新国立競技場が、白紙撤回となる前代未聞の出来事が起こりました。巨額の費用はもちろん、建造物の目的やプロセス、将来性に対して国民が疑問を突きつけた結果といえるでしょう。
建造物が当時の社会に受け入れられたのか、活用されたかといった視点でみると、つくられた時代の人々や社会の有り様も見えてきます。新たに見直される計画が、旧国立競技場のように国民に親しまれるものになっていくのかどうか。それは国民次第なのかもしれません。

また、建築と技術は切ってもきれない関係にあります。当時の高度な技術力の結晶が建造物だからです。時代ごとの技術の革新によって生じた、建築様式の移り変わりや、工期の短縮、コストの削減などにもつながっています。
加えて、建築物を通じて、誰が、いつ、何の目的で、どのような技術が使われていたかを明らかにしつつ、どれくらいの費用がかかったかなどを独自に試算することで、世界史を見つめ直してもらおうというのが本書のねらいです。

歴史とは今この瞬間にも粛々と積み上げられていく、人の行為の時間的な連なりであり、建築はその生き証人として、現代に生きる我々に直接その時代の精神を盛りつけた器ともいえるものなのです。本書を読んで、歴史と建築の深い関係に気づいていただけると幸いです。

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