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書店員さんが語る『あのころの、』の魅力

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窪美澄、瀧羽麻子、吉野万理子、加藤千恵、彩瀬まる、柚木麻子。
熱い注目を浴びている“旬”の女性作家6名が競演、女子高生時代ならではのセンシティブな心模様や取り巻く情景を鮮烈に紡ぎ出して話題沸騰の青春アンソロジー『あのころの、』について、全国の書店員さんから、たくさんの熱いメッセージが寄せられました。

【収録作品(掲載順)】
窪 美澄「リーメンビューゲル」
瀧羽麻子「ぱりぱり」
吉野万理子「約束は今も届かなくて」
加藤千恵「耳の中の水」
彩瀬まる「傘下の花」
柚木麻子「終わりを待つ季節」



★TSUTAYA 津田沼店 後藤美由紀さん
女の子の頭の中は恋とファッションのことだけじゃない。
勉強のこと、将来のこと、家族のこと、友達のこと。
悩んで、迷って、怒って、羨んでいつも出口を探してる。
あれ? 今の自分と同じじゃない?
そう、きっと、「女の子」はいくつになっても「女の子」なのだ。
それでいいんだ、きっと。
かつての自分が、そして、今の自分が愛しくなるこの1冊、
すべての「女の子」必読です!

★三省堂書店 新横浜店 比嘉 栄さん
これからが楽しみな女性作家達が描く"あのころ"に、
こころがざわつく。
「女子高生」という単語を思う存分解き放った、
生々しくて力強いアンソロジー。
やられました……上手く消化なんて出来やしない。

★SHIBUYA TSUTAYA 竹山涼子さん
女の子でもなく、女でもなかったあのころ、
でもどちらでもあったともいえたあのころ、
未来は果てしなく広がっていて、その広がりに不安を感じ、
今、自分を包み込んでいる世界がとても、とても小さいことに
気付いてはいたけれど、その中での息の仕方を覚えることに
必死だったことを思い出しました。
高校生に読んでほしいのはもちろんのこと、
20代、30代の女性にもぜひ読んで頂きたい作品です。
あのころ、あんなにも不安だったけど、
ここまでなんとかたどり着いた、これからも大丈夫、歩いていける。
という気持ちになれると思います。

★カボスワイプラザ店 山脇歩美さん
女同士の友情と、不器用な恋心。「甘い恋」というよりは、
「繊細で切ない恋」というのがぴったりな、女の子たちの物語。
漫画家、志村貴子さんの『青い花』を思い出させる、すてきな短編集だと思いました。中でも私が好きだったのは、柚木麻子さんの作品。特にラストシーンが好きです。
男の人が本書を読んだらどう思うのか、気になります。
また、登場していた女の子たちと同じ世代の女子たちは、
この本を読んでどう思うのか、とても興味深いです。

★明林堂書店ゆめタウン別府店 後藤良子さん
今、ちょうど気になっている作家の方ばかりが集まった1冊でした。それぞれの作品を楽しみつつ、読み終えるとひとつの物語を読み終えたような感じです。
先がみえなくて、自分が何者かも定まっていなくて、泣いたり、笑ったり、怒ったりと不安定だったあのころの自分がいました。それぞれの物語に出てくる不器用でぎこちない彼女たちが、とても愛しいです。
できるなら、十代の頃の自分に読ませたい。「大丈夫だよ」と言ってやりたい。
ちいさな心のゆらぎをすくいとってみせてくれた、この作品に出会えて、嬉しかったです。

★紀伊國屋書店横浜みなとみらい店 安田有希さん
先は見えないけれど、切り取られた一瞬の「今」。
当時は全く意識していなかったけれど、同性に憧れ、世界に同性しかいなかった自分自身の「あのころ」を思い出しました。
少しずつ、でも確実に「女」に近づいていく女の子たちの、ろうそくが最後の一瞬明るく瞬くような瞬間を切り取った小説たちでした。

★BOOKEXPRESS 東京北口店 千葉希代子さん
誰もが感じた、恋や嫉妬、友情、家族との思いが読んでいて心温まり、
そして懐かしさに溢れ、思いでいっぱいになりました。
あのころにはふつうだと思っていた日々が、大人になって思い出すとすべて
大事な時間だったのだと思えた一冊でした。

★TSUTAYA寝屋川駅前店 中村真理子さん
あのころの、まだ小さな檻の中でもがいていた幼い自分が居た。
友達、学校、家族、その小さな檻から離れたいのか、そうじゃないのか。
女の子って面倒だけど、やっぱりイイ。
もう戻れないから、今光ってみえる。

★さわや書店 上盛岡店 松本大介さん
学生時代をテーマに描かれると親近感が増すとともに、
作品全体が競い合って、凄みが増すように思います。
なかでも出色は「ぱりぱり」(瀧羽麻子)でしょう。
奔放な姉の「もうすぐだね」(87ページ)からラストまでの姉妹の会話に
『あのころの、』のエッセンスが全て詰まっていると思います。
言葉にならないあのころの感情に、笑いとともに込みあげてくる
もうひとつの想いがありました。

★啓文堂書店 渋谷店 篠原道雄さん
注目の女性新人作家さんが集まっていて、文芸小説という程かたくない
読みやすさがあり、とにかく暖かい小説集でした。
吉野さんの短編が、自伝的で、文章を書くことへの意欲が滲み出ていました。

★三省堂書店 営業本部 内田 剛さん
誰もが通り過ぎた「あのころ」の記憶が、ものの見事に再現された
“珠玉”という言葉が相応しい一冊。
不安、孤独、煩悶、焦燥、苦痛があれば、期待、夢、希望、憧憬、歓喜もある……
ガラス細工のように繊細でくるくると揺れ動き続ける感情の機微を
6人の作家それぞれの個性で、短くも純度の高い文学世界まで昇華させている。
みずみずしい才能の競演を心ゆくまで味わえるこの一冊を
悩める青春時代を過ごしている、また過ごしてきたすべての方にオススメしたい。
一瞬の積み重ねが、かけがえのない想い出に変わる
スリリングな瞬間を味わえる名品の登場だ――

★ブックポート203緑園店 浅井康雄さん
まさに今が旬であり、且つのびしろのある女流作家6人の
すばらしい作品が詰まった1冊でした。未読の方もいたのですが、
読後、他の作品も読みたくなりました。
1冊だけで完結せず、今後の読書の広がりも与えてもらいました。
以下、各短篇についての感想です。

●窪 美澄「リーメンビューゲル」
窪センセイは小物の使い方がとっても上手で、今回も「おにぎり」「治療具」といった何気ないものと聞き慣れないものの対比により、物語に引き込まれ、さらに奥行きを感じることができました。
少女2人が互いの秘密を暴露することで迎える未来が、確実に「不幸」へ向かっているのにも関わらず、秘密を共有すると決めた瞬間の「美しさ」で世界が浄化されたような清々しさが広がるラストの描写は圧巻でした。

●瀧羽 麻子「ぱりぱり」
今回初めて読ませていただきました。
「姉と妹」「天才と凡人」――自らの才のなさを恨み姉をただ憎んだ思春期から、
姉にも普通の人同じように「悩み」があると気づく大人への成長。
近すぎる関係ゆえに生じるギクシャクとした2人の距離感を埋める他愛のない会話。言葉の端々からからにじみ出る2人の相手を思う優しさが伝わってくる、やさしい物語でした。

●吉野 万理子「約束は今も届かなくて」
「ノンフィクション」もしくは「レクイエム」のような小説。
出てくる「本田勝一」「鷺沢萌」といった実名がいちいちツボでした。
著者自身の「今、これを書いておきたい」と言う気持ちが
一番伝わってきたような気がします。
ありふれた日常、他人への嫉妬、何者でもない自分、亡くなった友人。
失うことにより、大切なものに気づく事がある。
感想が描きづらいのですが、すごくいいなぁと思った作品です。

●加藤 千恵「耳の中の水」
「世界の動きには1ミリも関係のない日常の出来事」に、
これでもかと真剣に悩む女子特有の生態が丁寧に描かれていました。
主人公の、今いる世界の均衡を崩すことへの恐怖がひしひしと伝わってきます。
トモダチの一人に彼氏が出来ただけで全てが少しずつ狂っていく……。
思春期特有のもやもやした感情を「耳鳴り」と呼びたくなります。
短編としての構成も見事でした。

●彩瀬 まる「傘下の花」
いわゆる百合としても読めるのですが、それ以上に「家族」という見えない「鎖」が作品中に強く感じられました。
母子家庭と大家族という、互いに性質の違う鎖にがんじがらめになった青春。
恋とも愛とも違う、相手をを純粋に慈しむ気持ちが2人をまた苦しめている。
雪国のしんとした描写とそこに映える赤い傘。
自分自身の気持ちをも試すように待ち続け、別れる事になる主人公。
その後、一人で食べるであろう食事の事を考えると胸が苦しくなります。
自分にもわずかに残っていた純粋な気持ちを心の底のほうから掘り起こされました。

●柚木 麻子「終わりを待つ季節」
この作品集全体に、なんだかちくちくとする描写がたくさんあります。
その中でもこの作品のちくちく度合いは半端じゃありません。
鈍色のナイフをのど元につきつけられているかのように。
少女がオンナへと変わる描写にはグロテスクささえ感じられました。
フツーの中に潜む狂気のようなもの、と言ったらよいのでしょうか……?
読後の後味の悪さがすごくて、なんだか女性不信になりそうな作品でした。
けど、大好きですこーゆーの。