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  スピードと華麗なチェアワークで魅せる!車いすバスケットボール

スピードと華麗なチェアワークで魅せる!車いすバスケットボール

パラリンピックの花形競技のひとつ、車いすバスケットボール。観戦してもプレーしても楽しい車いすバスケットボールの魅力をお伝えしよう! 車いすバスケットボールを漫画やドラマから知った、ファンになったという人も多いのではないだろうか。巧みに車いすを操作して、左右にジグザグと走り回る選手たち。そして攻守攻防は転倒するほど激しく一見難しいと思われがちだが、車いすに乗れば誰でもプレーできるといった、ユニバーサルなスポーツでもある。   車いすバスケは通常のバスケットボールと同じコートとゴールリングが使用される。そして選手は車いすに座っているのだから、立位でいるときよりも相対的にリングは高くて遠い。しかも足で踏ん張ったり、ヒザのバネも使えないまま、腕力と少しの腹筋背筋だけではうまくボールを投げられない。プレーしてみるとそれはよくわかる。   まず、ゴールを見上げた時にその高さには驚くはず。リングめがけてボールを投げるけれども、届かない! それなのに、トップ選手たちは、7メートルほど離れた3ポイントラインからシュートを決めるほどの運動能力だ。車いすを走らせるチェアワークも車いすバスケの魅力だ。左右の車輪を互いに反対方向へ漕いで回転したり、腰や上肢のひねり動作も使い、自由自在にターンしながら走る。相手選手をかわしながらドリブルする華麗な技。ある選手は、「車いすバスケと出会って、ほんとうに自由の翼を手に入れた」と話していたほどの動きをする。 車いすユーザーではない健常者のチームもあるほど人気なスポーツであるのにもかかわらず、これまで健常者の選手には日本一決定戦の「天皇杯日本車いすバスケットボール選手大会」に出場することが許されていなかった。 それが2019年に行われた第47回大会では、健常者の選手枠が新たに設定された。これは車いすバスケがユニバーサルスポーツとして広がっていく大きなニュースであり、運動能力で勝る海外の強豪国を越えるための、日本代表チームの強化としても貴重な経験となったことだろう。
車いすバスケガイド 一般のバスケとほぼ同じルールだが、障がい程度による持ち点制は独特だ。 選手起用の戦略にも関わってくる。中度選手を厚くするのか、それとも軽度の得点力で勝ち抜くのか。点数からチームの特色が見えてくる。その特色を見分けるためにも車いすバスケットボールにしかない独自のルールを知っておこう。 【1.男女混合、健常者もプレーする】 性別や障がいの有無に関わらず試合する大会が広がっている。男子の日本チャンピオンを決める国内最高峰の大会である天皇杯にも女子選手や健常選手の出場枠が用意されるようになった。女子選手にとっては、フィジカルの強い海外強豪国との対戦を想定した経験のできる選手強化のチャンスとなっている。また、女子選手はマイナス0.5点として男女の運動能力差が補正される。この点数を戦略的に使うことも勝敗を左右する。そのため、女子選手の活躍は大会の見所といえる。 【2.障がいによるクラス分け】 車いすバスケットボールには「持ち点」制というルールがある。選手には障がいの重い方から順に1.0点から4.5点の持ち点が与えられている。そしてコート内でプレーする選手の合計点の上限は14.0と決められている。そのため障がい程度の軽い4.5点や4.0点の選手ばかりの選手起用はできない。チームごとに障がいの程度を揃える公平なルールだ。勝つために障がいが軽い選手ばかり出場させてはスポーツとしての公平さを欠く。選手たちの障がい程度について合理的に配慮することはパラスポーツの特徴だ。 【3.転倒】 選手同士が直接接触するフィジカルコンタクトは認められていない。相手選手の腕や身体をつかむようなプレーは反則だ。しかし、攻守の展開が激しくなると、車いすの車体が激しくぶつかり合う。その衝撃で車いすは跳ね上がり、飛ぶ。勢い余り、片輪走行しながらシュートする選手もいるほどだ。そして、ときには転倒することも。鍛え抜かれた選手は自ら起きあがり試合に合流する。   【4.激プレーでパンク】 急ブレーキ、急回転……。その激しい車いす操作から、パンクなどの故障も試合中に発生する。そうしたときに活躍するのが「メカニック」たちだ。チームでは予備タイヤを準備して試合に臨む。そしてパンクや車体の破損といった車いす故障が起こると、すぐさまタイヤ交換。ゲームの流れを止めないように、素早く対処する。   【5.コートサイズ】 使用するコート、リングの高さ、ボールは一般のバスケットボールと同じだ。またドリブルは、車いすを2回漕ぐごとにしなければならず、ボールを保持したまま3回漕ぐとトラベリングのファールとなる。また車いす走行の特徴上、ダブルドリブルの反則ルールは設定されていない。そのほかは一般のバスケとほぼ同じルールだ。        
取材・文・写真/安藤啓一


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