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天野暢子・高橋晋平

『プレゼンは資料作りで決まる!』刊行記念対談 天野暢子さん×高橋晋平さん(2)

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天野暢子さん+高橋晋平さん
プレゼン名手が教える「即決定!の法則 2」



――前回はプレゼンの基本についてお話いただきました。
「GHOUS」、覚えましたか?
今回は「自分らしさの出し方」について話が盛り上がります。
数々の制作秘話にもご期待ください!

ボツから生まれる自分らしさ

天野: 高橋さんはアイデアに関するご著書『アイデアが枯れない頭のつくり方』(阪急コミュニケーションズ[現CCCメディアハウス])を出していらっしゃり、アイデア出しの第一人者と言っても過言ではない方ですよね。アイデアを出す際に、「自分らしさ」の表現についてはどんなふうに工夫されていますか。

高橋: アイデア出しのポイントは、1)数を多く出すこと、2)ダメなアイデアから出すこと、というのが持論です。それが、最終的によいアイデアをつくって、形になっていくために大事なことだと思っています。実際、商品企画プレゼンのときにも、ボツになってしまう企画は山のようにあります。ただボツになる企画があるからこそ、それと比較して、「この企画は彼の企画の中でもいいんじゃないか」みたいに思ってもらうことができますよね。

天野: なるほど(笑)。ダメな企画を出していくことで、ハードルを下げるイメージですね。

高橋: ボツ企画を出すことで、結果、それが踏み台となったりするんです(笑)。

天野: (笑)。

高橋: また常に自分の中では、一風変わった、話題性があって、意外性があって、新しい、ちょっと笑える企画を出していくことこそ自分の人生だみたいに思っているんです。そうした企画を出すことが自分のミッションというか。

天野: ミッションなんですね。

高橋: なので、売れ筋のキャラクター商品と比べるとなかなか企画が通りづらい面もありますが、一風変わった企画を出し続けることは継続しています。そして、その企画のプレゼンは他の商品のプレゼンに対して、異質で、ちょっと笑えて面白いみたいなことになるように、非常に工夫してあの手この手で行っています。

企画を通す「あの手」とは?

天野: あの手この手、ですか(笑)。「あの手」の1つぐらいをちょっと教えていただけますか。

陰の声: 「あの手」としては、ダメなものから出していくのですか。

高橋: そうですね。ダメなものも出すという感じですよね。

陰の声: 5本出すとしたら、3~4本はちょっと捨て企画みたいなことですか。

高橋: それも作戦としてあったりはします。たとえば3本出すとしたら、1本通したい企画があって、他の2つは比較対象として出すという作戦をとることもありますね。それがいいかどうかはわからないのですが、そのおかげで通った企画も多くあるんじゃないかなと思っています。

陰の声: 天野さんは、1本を通すために2本は捨て案とする作戦をとることはありますか。

天野: それは私もやったりします。そもそも最初から3案出してくださいという条件がつくこともあり、ある1案を通すために落ちそうなものを2つ並べておくというときですね。きっとこれが採用されるだろうなと、こちらが思うものが通るケースが多いですよね。

高橋: はい、そうですね。本当に。

会議は市場の縮図である

天野: 高橋さんのお話で気になるのは、「笑いを取る」というところです。自分は面白いと思ったのに人から全然そう思われなかった、というご経験はないですか。

高橋: それは多々ありますね。でも、そうした反応こそが、「売れる・売れない」の間違いのない指標になると思っています。商品企画のプレゼンを聞いてくれる人は40、50人いるんです。

天野: 皆さん、社内の方ですか。

高橋: はい。社内の企画会議で、営業担当の方々や決裁者である上司がいたりするわけです。そこにボツネタも含めて企画提案すると、出した瞬間の反応である程度、市場の反応がわかってしまうんですよね。

天野: ええ。

高橋: 会議には、年代もさまざまな男女が出席しています。商品のビジュアルを見せて、キャッチコピーをひと言で言ったときに、ちょっと寒い空気になるのか、その瞬間に笑いが起きるのかというのは、市場の反応を見る上での答えになる気がするんです。

天野: なるほど。

高橋: これを市場に出したときに、お客さんがどう思うかということが、会議の場の空気で読める。まさに「会議室が市場の縮図」になるわけです。

天野: よくわかります。

高橋: なので、ボツネタも含めていろいろ出していき、その瞬間にすごく受けたものというのが、自分でも自信を持って商品化まで持っていけるということはありますね。

天野: 参考までに、玩具メーカーの企画会議というのは、どんな状態でプレゼンするのですか。たとえば試作品を見せるのか、スライドで見せるのか、いろいろあると思うのですが。

高橋: おっしゃるように、いろいろなやり方があります。たとえば、「ある商品が流行っているから、今回提案する商品はこれです」と試作品を作って見せることもあれば、動くギミック(からくり)がついている商品だったら、動画をいきなり見せて、「これが商品のPV(プロモーションビデオ)です。このPVをネットで流したら、絶対に拡散されますよ」みたいに面白いVTRを手作りしてプレゼンするなど、商品によって結構、作戦を変えていったりしますね。

天野: なるほど。

2ちゃんでわかる「言いたくなる」ネタ

陰の声: ネットで拡散というお話が出ましたが、おふたりはネットでの情報収集をよくなさるんですか。

高橋: はい、私はすごくします。特に「2ちゃんねる」をよく見ています。「2ちゃんねる」は匿名でコメントを書く場ですが、そこでこのネタはこれだけ盛り上がっている、このネタは盛り上がっていないというのを見るだけで、どれがいかに人に言いたくなるネタであるかがすごくわかるんですね。

天野: そうですね。

高橋: ぱっと見て面白いというわかりやすさと、それを人に伝えたくなるという拡散性が、商品企画の非常に重要な要素だと思います。その2つを考える意味でも、よく「2ちゃんねる」はチェックしていますね。

匿名だから垣間見えるユーザーの本音

陰の声: オープンな世界にはない匿名性が「2ちゃんねる」では垣間見えるということですか?

高橋: そうですね。会社の会議だとやっぱり上司に気を使ってとか、後輩にバカにされたくない気持ちもあって、本当のことが発言できなかったりしますよね。その企画に「?(売れそうもないよな)」と思っていても、とりあえず面白いですねと同調してしまう、というのが会社の会議の特性だと思います。すべてとは言いませんが、どの会社でもちょっとはそんな傾向があるのではないでしょうか。

天野: 確かにそうですよね。

高橋: そんな中で、匿名だからこそ本音を言い合っているネットの書き込みの世界を見ると、本当にこの記事・この話題は面白いんだなというものがちょくちょく見つかります。その面白さとは何だろうということがアイデアの参考になったりします。

あの人気商品「キーの芽」はこうして生まれた!

陰の声: 高橋さんには「2ちゃんねる」発の企画があるということですが。

高橋: 発とまでは言えませんが、「2ちゃんねる」をヒントにしての企画ならあります。「キーの芽」という商品です。「木の芽」じゃなくて「キーの芽」という洒落で、吸盤でその商品をキーにつけると、キーを押すたびにぷるぷる揺れるというものです。パソコンのキーボードに草をはやすことができる、殺伐としたオフィスに緑を、というコンセプトの商品です。

天野: (笑)。

高橋: ネットの中で笑いをあらわす記号で「www」があります。「2ちゃんねる」などの書き込みではこれを「草」と呼んでいたりするのですが、その草とPCユーザーを組み合わせて発想した商品です。ネットでの拡散を意識したのですが、狙い通り、「本当に草だな」「笑えるね」みたいに話題が盛り上がったことはありますね。

陰の声: わかりやすさと拡散性の2つを兼ね備えていた商品ですね。

高橋: そうですね。

アイデアを引き出すトレーニング法

陰の声: なかなかアイデアって思いつかないのですが、天野さんはアイデアの引き出しを増やすためにどんなトレーニングをなさっていますか。

天野: 私はとにかく気になったワードをメモ帳に書き留めます。1日1ページと決めて、1個の日もあれば、0個の日もあるし、20個以上という日もあるのですが、気になったワードはとにかく控えておくようにしますね。歩いていても、何をしていてもメモです。もしペンとメモ帳がなかったら、スマホのメモに入力します。

高橋: (大きくうなずく)。

天野: そして、しばらく経ってからそのワードを検索してみたり、ワードを使ってアタマの体操をしてみたりします。

高橋: 具体的にどんなことですか。

天野: たとえば、「水」と「コップ」というワードがメモに書いてあったとしたら、この2つを掛け合わせたらどうなるんだろうというアイデアが浮かぶ瞬間があるんですね。同じページに書いてなくても、1ページ目と23ページ目に書いてあることの掛け合わせで、何か面白い企画が生まれるんじゃないか、ビジネスのネタになるんじゃないかというようなことを考えたりします。私はこうして「掛け合わせ」型の発想法ですが、高橋さんはどんなふうにアイデアを出されますか?

アイデアが枯れない「しりとり」発想法

高橋: 僕は「アイデアしりとり」という方法がすごく効果があると思います。これは、ひとりで「しりとり」をしながらアイデアを出していくという発想法です。「しりとり」をすると、いろいろな言葉が無作為に出てきますよね。それを今企画していることと組み合わせたら何になるだろうというのをどんどん考えていくんです。

天野: 面白いですね。

高橋: たとえば、今企画しているのがおもちゃだったら、リンゴ→ゴリラ→ラッパ……と出していって、じゃあ、リンゴのおもちゃって何だろう、ゴリラのおもちゃって何だろうみたいなのをむりやりにでも出していきます。普段生活していると、自分の興味がある分野の情報しか入ってこないことが多いですが、「しりとり」で出てくる言葉って自分でも思いもよらないものになります。そこからフツウでは思いつかなかったことが発想できるわけなんです。

天野: 確かにそうですね。

高橋: 「しりとり」は簡単にいろいろな言葉が出せるので、そうやってダメなアイデアでもいいから、どんどん数を出していくことで、「あれ、これはちょっと面白いんじゃないか」というものが必ず出てきて、それが何かとまた組み合わされて、新しいアイデアになる――こんなプロセスで普段アイデア出しをしていますね。

天野: とても参考になります。ありがとうございます。

――制作秘話も登場。プレゼンについてどんどん話が盛り上がります。
次回は「プレゼン力で人生変わった?」。プレゼン力が変えた未来とは?
どうぞご期待ください。