旅を重ね、滑走を繰り返すごとに、心は太くなる。
Special Talk
制作の現場から
写真集『雪山を滑る人』がいよいよ12月4日発売となる。
日本スキー界において、久々に発売される大作写真集だ。
制作大詰めの11月8日、著者、造本家をはじめスタッフは印刷立ち会いのため埼玉・白岡に集結した。
本写真集はどのような想いでつくられ、生まれるのか。
写真家・渡辺洋一と造本家・町口覚の対談を贈る。
町口 スキーやスノーボードは、写真と映像の差が大きいのかな。
みんなムービーに流れてるように見える。
渡辺 ムービーは大きい。ムービーがムーブメントを作ってきた。
町口 洋一さんもムービーを3本つくった。
率直に言うと、スキームービーがダメとかとかそういう話じゃなくて、非常に音楽的。
渡辺 音楽?
町口 音楽が挿入されるじゃないですか。
でも、実際の雪山の現場には音なんて何もない。
映像がいいとか悪いとかではなくて、音楽も僕の中には入ってくるから、ちょっとブレて見える。
でも、ニセコへ行って洋一さんのポジフィルムを見せてもらっている時は、音がない。
そうすると集中でき、想像力がかき立てられる。
渡辺 写真集で扱っているスキーのスタイル、すべり方や遊び方は、日本で今までそれほどポピュラーじゃなかった。
まだ僕が始めた頃は世の中に出回ってなくて、この遊び方をみんなに見てもらってパッと入りやすいように映像でまず作り、知ってもらおうと思ってた。
渡辺 バブルの頃、スキーをやってると軽いヤツだと思われた。
バブルが終わって、スキーの業界も元気がなくなってきた頃に、僕らみたいなバブルを知らないカメラマンがゲリラ的に出てきた。
時代に左右されず、自分の世界を徹底的に追求して、自ら発表してきた。
元々、スキーや写真もそうだけど、身に着けるものや音楽でも、スタンダードなものが好き。
あまりころころ変わらないものが・・・・・・。
町口 普遍的なもの。
渡辺 そう。普遍的なもの、普遍的なこと。
そうやって考えた時に、先人は何をやり、いい意味でインスピレーションが湧いたり、刺激されたものは何かなと思ったら、写真集だった。
昔のいい写真集はカラーでもモノクロでも、パンチがある。きっとそれをつくっている時のパッションが紙に滲み込んでるから伝わる。
そういうものをやってみたいと思った。
町口 1994〜95年にかけて、ものすごい数の同世代の写真を撮っている人間と会ったけど、スキーを撮る人はひとりもいなかった。
だけど、自分探しはあった。チベットへ行ったり、旅モノ系写真が多い。
彼らが悪いわけではないんだけど、全然違うんだよね、渡辺洋一は。これか、本物はっていう感じ。
ファッションでもアートでもなく、ただただ誠実にやっている。
それって、芯があって強い。
人間的に奥行きがあるというか、そういう力を感じた。
渡辺 ホント、これしかやってきてない。
町口 「パッと1回アラスカへ行ってきました」では撮れない写真。
写真を見る前にニセコで話したけど、その時点で、これは全然別物の世界の写真があるなと思った。
そこで一番僕がよかったのは、高梨穣さんとか、撮る側と撮られる側の関係があったこと。
今回の写真集は、結果的に高梨さんの写真が多くなった。
話を聞くと、「いや、ずっと腐れ縁で友達」って感じ。
やっぱりそこにも人間の関係性がちゃんと築かれてる。
渡辺 理由なんかなく、ただ好きだからずっとスキーをしてきた。
その時々で、大きな壁や挫折があったり、そんな時にもスキーがあった。
弱いところがあるから、何かしっかりつかまるものがほしい。
それは宗教だったり、パートナーだったり、それが僕の場合はスキ
ー。
スキーがあれば、何があっても耐えられる。
町口 若者たちが自分探しのためにインドやアラスカへ行ったりする。
だけど、芯がある人が撮る写真は、やっぱり人間が出る。
それを確実に思えた。
今回、いろいろなスキーの写真集とか見せてもらったけど、洋一さんはどこへ行っても同じ。
ニセコ、アラスカ、ヨーロッパ、アルゼンチンだろうが。
コンテンツで写真を分けようと思ったらできるんだけど、分けても意味がない。
場所とか雪質とか光の差とか、雪の柔らかさとか、斜面の角度とか、いっぱいあると思う。
でも、全部それが同じように、いい意味でフラットに写真構成ができるなって思った。
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『雪山を滑る人』制作秘話
- talk about PHOTO BOOK 写真集が生まれる(『POWDER SKI 2010』より)
- From Editor 僕らがつないでいくもの(『大人のスキー 2010』より)