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  【パラスポ編集部が教える】かんたんボッチャガイド!

【パラスポ編集部が教える】かんたんボッチャガイド!

ボッチャは重度の脳性まひ者や、同程度の重度障がいが四肢にある人のために、ヨーロッパで考案されたスポーツ。 男女の区別なしに障がいの程度でクラス分けがされ、1984年にはパラリンピックの正式競技となった。 激しい運動はないものの、さまざまな状況に対応する選手たちの技術力と集中力で勝敗が決まる。頭脳戦こそがボッチャの最大の特徴だ。 「パドル」という杓子状の板、「キャリパー」というコンパス状のもの、そして距離計測器の「メジャー」が競技用具一式   試合はシングルス・ペア・チーム(3人)の全3種類の形式がある。いずれも長さ12・5m、幅6mの大きさのコートを使用し、勝敗を競う。 選手はコート手前の6つに分かれた「スローイングボックス」と呼ばれるブロックの中でしか、ボールを投げることはできない。 両選手は交互になるようにボックスに入る。   試合は、どちらかの選手が目標球となる白色のジャックボールを投球することではじまる。しかし、ジャックボールは緑色で示した「ジャックボール無効エリア」やコート外に配置することはできない。   ジャックボールの配置を終えたら、いよいよ自分たちのボールを的に近づけるための勝負がはじまる。ボッチャの試合は、互いの6球で得点を計算するまでを「1エンド」として数回繰り返す。 ジャックボールを投げた選手(チーム)が先攻となり、一投目を行う。エンドのはじめは必ず、ジャックボール含めた2球を連続で投げる、ということだ。 そのあとに後攻側がボールを一球投げるが、それ以降は「相手よりも投球をジャックボールに近づけられなかったチーム」が、相手よりもジャックボールに近づけられるまで投げ続ける。 相手の1球に対して、持ち球となる6球をすべて投げきってしまうこともありえるのだ。 微妙な差が生まれた場合、試合中に審判がボールとの距離を測る   頭脳戦が繰り広げられる競技だが、投球にかけられる制限時間は規定で決められている。個人戦やチーム戦といったカテゴリや、障がいのクラスによって異なるが、いずれも4〜7分の設定。 もし6球すべてを投げきる前に持ち時間を過ぎてしまった場合、残りの球を投げることはできなくなる。時間にも気を配らなければならない。   ともに6球投げ終えたらエンドが終了し、得点が計算される。 ジャックボールに最も近づいたボールを投げた選手(チーム)にのみ得点が入り、負けた側の「ジャックボールに最も近いボール」よりも更に近いボール1個につき、1点が加算されるぞ。 この場合は、赤ボールのチームに3点が加算される   ボッチャで使用される用具は、さまざまな工夫がなされている。 ボールは、大きさと重さ(周長が270㎜±8㎜以内、重さは275g ± 12g 以内)がルールで決められているなか、マイボール制をとっていることが特徴だ。 これは、規定に違反していなければ硬さや材質は問わないということ。 ボールに特色を出し、選手の障がいやプレースタイルによってカスタマイズできるところが競技のおもしろさとなっている。   そして、競技用具のなかに「ランプ」と呼ばれる勾配具がある。 これは自力で投げられない選手のプレーを支える道具で、滑り台のような斜面にそってボールを転がすことで、投球を可能にするものだ。 ランプは長さを継ぎ足すことで高さを調節でき、スピードを出したり、遠い距離を狙うこともできる。「アシスタント」と呼ばれるサポートメンバーにボールを設置してもらい、手を使わずにボールを押し出すことで投球を行う。 自身での投球ができない「BC3クラス」という競技クラスに属する選手のみが使用を許されている。 自分の意思をアシスタントに伝えることで競技に参加できるため、特に重い障がいを抱えた選手でも投球できる。どんな人でも楽しむことができるという理念を形にした、ボッチャならではの道具だ。 選手とアシスタントのすばやい意思の疎通が肝!   最後に、ボッチャの奥深い戦略、そして観戦する際に注目するべきポイントを紹介する。いったいどんな作戦を立てているのか。選手の狙いを考えてみると、よりおもしろさを感じることができるかもしれない。 まずは、「的となるジャックボールの位置は自由に動かすことができる」ことだ。 最初の投球で相手の嫌がるポジションに配置することはもちろん、試合のなかで自分のボールをぶつけてジャックボールを移動させることも、相手を追い詰める大事な戦略のひとつになる。 プロはこんなこともできる…っ!   そして、「手元に残る球数が多いほうが圧倒的に有利」ということ。球数が少なくなれば、必然的に仕掛ける戦術も限られてしまうからだ。 相手の理想となる投球コースをまず塞ぎ、ペースを乱すことができれば、一球が大切なボッチャにおいて相手にかかるプレッシャーは相当なものになる。   最後に、ボッチャはその手軽さが魅力のひとつだ。ボールさえあれば会社でも自宅でもプレー可能なため、最近は健常者も競技会を行う場が増加している。 「もっとボッチャを知りたい!」と思ったのなら、まずは一球ボールを投げてみよう。すぐに夢中になるはずだ。 さあ、ボッチャをはじめよう!   取材・文/編集部 写真/吉村もと イラスト/丸口洋平


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