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  スペシャルオリンピックスのいま(2/2)

スペシャルオリンピックスのいま(2/2)

〈幸運とは準備が機会に出会うことである〉 これは、アメリカの人気テレビ司会者オプラ・ウィンフリーの言葉です。知的に障がいがあることが不幸なのではなく、機会に出会えていないことが不幸なのです。スポーツによって人は変化します。世界大会を経験すると、年々成長していくアスリートがいます。すごく積極的になったり、しゃべれなかったアスリートがかなりお話ができるようになったり。私もオリンピックにでて成長することができました。こうした経験を多くの人にしてほしい。その歓びを誰も奪うことはできないのです。 この活動をできるだけ多くの人たちに知ってもらうために、オリンピアンたちにドリームサポーターとして参加してもらっています。フィギュアスケートの安藤美姫さん、小塚崇彦さん、柔道の平岡拓晃さんなどです。参加した感想を聞くと、知的障がいのある人がスポーツを純粋に楽しんでいる姿を見て、「スポーツの原点」を再認識したりしている。自分のアスリートとしての経験を、引退後の活動の中でどう生かすかを考える良い機会になるとも思います。 サッカー元日本代表の山口素弘さんには、昨年、シカゴで行なわれたユニファイドフットボールカップの、日本選手団アンバサダーとして参加していただきました。ユニファイドスポーツというのは、知的障がいがある人とそうでない人がチームをつくってプレーするものなのですが、山口さんなどJリーガーなどがコーチ陣に入ると、選手たちがすごく成長するんです。 私も見ましたが、誰がアスリートなのかわからないぐらいになっていました。もともと能力がないわけではなく、やれば普通にできることが増える。生きていく力が育まれるんですね。そういうシーンを目の当たりにすると、こういう機会を増やしたいなとつくづく思います。 最初は教える側も大丈夫かなと思っていたりするんです。でも実際やってみると、「おっ、できるじゃない」と見方がガラっと変わる。当事者たちも変化・成長しますが、その周囲の人たちはもっと変わっている。当事者たちのまわりで起きる変化こそがスペシャルなんです。 今、Jリーグ、プロバスケットボールのBリーグとも提携して、交流ができつつあります。ユニファイドスポーツがもっと全国に広まってほしいと思っています。 SOの強みは、実は地区組織の厚みです。全都道府県に地区組織があって、非常に活発です。アスリートたちも、その地域の人たちに教えられながら成長しています。 去年11月の富士山マラソンの知的障がい女子の部で優勝した樋口敦子さんは、SOアスリートです。私がコーチをしているわけではなく、地区の人が教えてくださっている。そうした日常的な応援で、十分アスリートは変われるのです。 大事なのはまわりがアスリートを信じること。信じて環境を整えれば選手たちは変わります。 9月に愛知県で、SO夏季ナショナルゲームが開催されました。競泳、テニス、体操など13競技でアスリートたちがそれぞれに力を出してくれました。 スローガンは「超える歓び。」。これはすごく重要なテーマで、アスリートが自分を超える、周囲の人たちは、知的障がいのある人たちとの間にある壁を超えるという意味もあるでしょう。 そうした活動を通じて、SOに関わる人みんなが元気になってほしい。それが私たちのモットーでもあります。 SOでは、目を見張るような大記録がでるわけではありません。でもスポーツは記録がいくらよくても、意外と記憶に残らないものです。記録に加え、記憶に残るものがあるから感動が生まれる。SOは感動のシーンがたくさんあります。ぜひ参加したり応援したりしてもらえたらと思います。   取材・文/西所 正道 写真/高橋 淳司


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