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  パラリンピックがくれた情熱と商機(1/2)

パラリンピックがくれた情熱と商機(1/2)

壮健な体躯、こぼれる笑顔。スポーツマンらしい爽やかな印象の竹内さんが経営するつなひろワールドは、障がい者アスリート雇用支援のパイオニアである。東京オリンピック・パラリンピックの招致を契機に、今でこそ障がい者アスリートに注目が集まるようになったが、ほんの少し前は、メダリストであってもスポンサーがつくどころか無職というケースもあった。就職先に恵まれれば、よりよい環境で競技に打ち込むことができ、社会人としての地位も安定する。試合でよい結果を残すこともできるだろう。 一方、企業にも大きなメリットがある。一定規模以上の企業は、法定雇用率を超える数の障がい者を雇用する必要がある。この法定雇用率は現在2・2%だが、3年後には2・3%に上がる。達成できない企業は不足人数×5万円を毎月納めなければならない。これはかなりの金額だ。障がい者アスリートを雇用すれば、法定雇用率達成に寄与することができるのだ。 企業のメリットはそれだけではない。アスリートの活躍により企業の知名度が上がり、イメージアップも期待できる。さらに、同僚の活躍を応援することで社内に結束力が生まれ、愛社精神や仕事に対するモチベーションも上がるのだという。 竹内さんは、大学卒業後、ザメディアジョンに入社。新卒の採用支援などに従事した。転機が訪れたのは2012年。同社が新規事業として障がい者アスリートの雇用支援企業つなひろワールドを設立。責任者として竹内さんが選ばれたのだ。その時、竹内さんは親会社に籍を置いたまま事業に携わる「出向」ではなく、つなひろワールド専任という道を選んだ。 「あえて退路を断ったんです」と、微笑みを浮かべながら当時を振り返る竹内さん。まさに背水の陣で障がい者アスリート雇用支援の道を突き進んだのだ。 まずはこれまでほとんど接点のなかったパラスポーツの世界を知ろうと、競技の見学から始めた。創業の年、2012年はロンドンパラリンピックが行なわれた年だ。竹内さんは迷うことなく国際線に飛び乗った。 ロンドンで深い感銘を受けた竹内さん。とにかく「楽しかった」と語る。障がい者アスリートに関する事業を立ち上げるのであれば、世界の頂点といえる舞台を肌で感じておくことがいかに大切かを学んだという。 「アスリートたちはこの場に立つことを目標にしているんです」 ロンドンの熱気を受け、初めてアスリートたちと同じ視線、同じ舞台に立てた気がした。


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