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  どんな人でも海は楽しめる!~中谷正義~

どんな人でも海は楽しめる!~中谷正義~

中谷は、遅咲きのサーファーだ。出身は千葉県だが、サーフィンを始めたのは27歳を過ぎてから。友達のすすめだった。まるで何かに取り憑かれたかのように海に通うようになった。 波は同じようなシチュエーションで立つことはない。毎回、違う形、力をもった波と感覚を研ぎ澄ましながら戯れて楽しむサーフィンは、中谷を夢中にさせた。プロを目指したわけではないが、足繁く海へと通ったことでショップからのサポートを受けるまでの腕前になった。 中谷は、現在も仕事の合間をみては海へ向かう。ただ、向かう目的は現在と昔とではだいぶ変わった。サーフィンを始めた頃は、それこそうまくなりたい一心で海へと足を運んだが、50歳になった今は、それこそいい波が立つ条件の時は、自分のために海へ向かうが、波が小さいような時は、障がいをもった人々を誘い、海へと向かう。 「障がい者のほとんどが、海を楽しむことなんてとんでもない、絶対にムリ!と、思っています。でも、そんなことはありません。半信半疑な障がい者を海に連れて行き、サーフボードやカヌー、ボディーボードで海に入ると、それだけでみんなとても喜びます。ロングボードを使いタンデム(ふたり乗り)で波に乗ろうものなら、心の底から楽しい!といった表情を見せてくれます。そんな表情を見ていると、とても幸せな気持ちになります。それが、今の活動の原動力になっています」。 中谷が、障がい者を海へと導く活動を始めたきっかけは東日本大震災まで遡る。普段、建設業に従事する中谷は、震災時に、仮設住宅の建設の仕事で、宮城県の仙台市や多賀城市に出むいた。それは震災直後の4月だった。衝撃的な光景を目にしながら仕事をしつつ、手の空いた時には被災地の知人に支援物資を送り被災者のサポートを行なっていた。しかし、そのサポートも行き詰まり、もっと自分らしい活動ができないかと考えた時に、サーフィンを教えていた知人から、脊髄損傷の人たちを海に入れる活動をしている団体を紹介される。 「ボランティアのみなさんと時間を共有し、自分が得意とするサーフィンで障がい者の方々が笑顔になる場面に出くわすと、えも言われぬ感覚を覚えたわけです。あの瞬間があったからこそ、今の自分がある。障がい者の方々に海の楽しさを伝えることをライフワークにしようと覚悟を決めました」。 現在、千葉県を中心に活動を行なう中谷は、これまで脊椎損傷をはじめ、義足や義手、脳性麻痺、弱視、全盲の障がいをもった人々と海をともにした。その人数は、のべ500人ほどになる。 「基本、どんな障がい者でも海に連れていくのが僕のモットー。いろいろと問い合わせがありますが、たとえば右手がない人だったら、僕自身が右手を使わずにサーフィンをしている動画を撮影して、それを見てもらい不安を解消し参加してもらいます」。 とはいえ、障がい者を海へ入れることは、なかなか難しいとも話す。障がい者が乗っているサーフボードのコントロール、周りのサーファーへの配慮などを考えると、サーフィンのスキルの高い人材のサポートが求められるからだ。今後の活動に、上級者のサポートが増えることを願っている。   写真/長谷川義行 取材・文/編集部


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