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  誰もやっていないから面白い 石井康二(その1)

誰もやっていないから面白い 石井康二(その1)

「イェーイ」 大柄なアメリカ人選手たちが、陽気にハイタッチしている。ミスプレーした時も、ベンチには笑顔がいっぱい。心の底から楽しそうにスポーツしている。東京で初めて開催された中外製薬2017車椅子ソフトボール大会に招待されたアメリカ代表チームの男たちだ。 ベースボールの国アメリカで、車いすの人たちが楽しめるゲームとして誕生したこのスポーツを、日本に紹介したのが日本代表選手の石井康二たち。車いすバスケットボールをしていた仲間とアメリカの車椅子ソフトボールを体験しにいったのがきっかけだった。 「バスケのアメリカ代表選手も一緒にプレーしたけれど、バスケの時とは違って、のらりくらりと楽しそうにプレーしていた。草野球のようにヤジも飛んでくる。単純にワクワクした」 当時の石井はバスケの強豪チームに所属して、厳しい練習をこなしていた。そういったスポーツのストイックさとは正反対のソフトボールに強く惹かれたという。 帰国すると仲間たちが各地に車椅子ソフトボールチームを作っていった。そして今回の大会は石井が中心メンバーとなり、スポンサーへの営業活動や会場確保といった準備に奔走して実現にこぎ着けた。   石井は高校一年生の春、交通事故で両足に障がいを負った。一年間の入院を経て復学するものの、学校に馴染むことができず退学した。しばらくは自宅でゆっくりしていたという。「母親の送迎でゲームセンターに入り浸っていた」と当時のことを振り返る。 モータースポーツに興味があったこともあり、18歳になるとすぐに自動車免許を取得する。50年以上も前から身体障がい者の自動車教習をしてきた東園自動車教習所は、入所しながら免許取得をすることができるので、全国から車いすの人などが集まっていた。 そこで石井は、国立リハビリテーションセンター(国リハ)の存在を知った。職業訓練でセンターに入所する条件のなかに運転免許の取得があり、そのために教習を受けている人たちが多かったからだ。そのなかに車いすバスケ日本代表として活躍することになる佐藤聡たちもいた。 佐藤は運転免許を取得したら国リハで職業訓練を受けて、バスケをしながら就職先を探す。そして日本代表選手になるという夢を語ってくれた。 その時まで車いすバスケのことも知らなかった石井は、彼から誘われるように国リハへ入所した。そこの体育館では車いすバスケの強豪チームも練習しており、「僕も自然とバスケをはじめた」という。


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