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  当事者の生の声を「笑い」に乗せて発信(その2)

当事者の生の声を「笑い」に乗せて発信(その2)

「スタジオ撮影に入る前にMCの山本シュウさんや玉木幸則さんたちを交えて行なう打ち合わせがとても長く、白熱します。玉木さんには、これまで長い間、障害者の権利などについて発信してこられた経験から、誤解を招かないような表現になっているかとか、しっかりと意見をもらえるんです。VTRを彼らには必ず見せるのですが、途中でいろいろ言われます。『これはちょっと微妙やなぁ』とか(笑)」 外してはいけないこと、やりすぎてはいけないことなど、構成を何度も見直して確認を重ねる。ドキっとさせられなければ伝わらない、という真野CPだが、このように実にていねいに番組は作られている。 「当事者が何をバリアと感じているのか、を伝えるのが私たちの仕事。伝えるときに、見ている人の役に立つのか、先入観を覆せるのか、健常者に「気づき」があるのか、その3つはいつも考えていますね。そこにどのように〝笑い〞を取り混ぜて伝わるやすくしていくかがポイントなんです」 「感動ポルノ(※)をテーマにした回を放送したことがありました。去年プロデューサーになって、バリバラをどういう番組として発展させていくか、まだ自分の中でもはっきりしなかった時期に、番組のあり方をもう一度問い直してみようと思ったのが、この企画をやった個人的な動機です。 感動ポルノのような描き方は、テレビではずっとやってきました。社会的弱者の人たちを描く際に、とてもわかりやすい手法で、ある種テレビのノウハウが詰まった構造なんです。 それを明らかにして、パロディにして笑うことで、こうじゃないものをどうやって生み出すかを考えたかった。次に進むための棚卸しをしたんです。 それが意外と受け入れられました。その時に『メディアが信用されなくなっているな』と感じました。つまり視聴者が『メディアは都合のいいように伝えているんじゃないの?』とか、『リアルなものが伝わってないね』とか、『またこの語り方か。飽きたよ』とか思ってるんじゃないかと。だとすると、それを乗り越える手法を考えないといけないし、違う伝え方を考えないといけない。なんとかその方法を見つけたいと考えるようになりましたね。     ※感動ポルノ……障害者が一生懸命に何かを達成しようとする場面をメディアが取り上げ、健常者が「感動をもらった」「激励された」と描く行為・演出。「ポルノと表現したのは、ある特定の人をモノ扱いして、他の人が快感を得ようとしているから」と、造語したステラ・ヤングさん(豪のジャーナリスト・コメディアン)は言う。


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