第19回 映画監督
本広克行さん
2001年4月号掲載


PROFILE
もとひろ・かつゆき 昭和四十年七月十三日生まれ。香川県出身。横浜放送映画専門学校(現在の日本映画学校)卒業。CM制作会社のアルバイトを経て,共同テレビジョンに番組契約で参加。「世にも奇妙な物語」「お金がない!」「蘇る金狼」などの数多くのテレビドラマを手掛け、平成八年「7月7日、晴れ」で劇場作品デビュー。他の映画作品に「友子の場合」「踊る大捜査線 THE MOVIE」「スペーストラベラーズ」に加え、現在公開中の「サトラレ」がある。十一年からROBOT映画製作部に所属。私生活では一児の父。

ぼくの作品の特徴? ヘリコプターが出てくることかな(笑)。あの爆音が好きなんですよね
娯楽作品が必要な時代
 ぼくの夢はずっと「映画を撮ること」だったんです。本当に熱い思いを持って、香川から上京してきました。本当だったら、大学に進学して、映画研究会なんかに入って仲間をつくって、そうやって段階を踏んでいくんでしょうけど、ぼくはすぐにでも映画の世界に入りたかった。「関係ない、関係ない」といって、一気に映画の専門学校からぼくの映画人生は始まっているんですよ。「早くつくんなきゃ」と思って。だからいまも映画をつくってること自体が夢の継続ですよね。
 ぼくの場合、そういうふうに「映画をつくる」ことが第一にあるから、自分の作品のテイストについてはあまり意識したことがないし、こだわっていないつもりです。お客さんの見たいものを中継してるだけだと思ってますから。ぼくは自分を“職業監督”だと思っているんですよ。まずはお客さんを喜ばせたい、って。
 テレビをメインにやっていたころは、クイズ番組に情報バラエティ、SFドラマ、アクションと本当に多様なジャンルの番組を手掛けてきました。そしてこれまでつくった劇場用の映画作品五本も、テイストは全部微妙に違うし、そうなるようにつくっているつもり。でもそのなかでこだわっているといえば、「わかりやすい作品にする」ということかな。何といっても娯楽映画をつくりたいんです。
 というのも、いまは娯楽映画が必要な時代だと思っているからなんです。まずはたくさんのお客さんに見てもらいたい。せっかくつくったのに、誰にも見てもらえなかったら、寂しいじゃないですか。だからいろんなアプローチの仕方を試してみて、多くの人に劇場に足を運んでもらいたいんですよ。
 でも最近の若い人の邦画に対する意識は、少しずつ変わってきているみたいだね。昔みたいに「邦画なんてつまんない」と思っている人は減ってると思う。それはたぶん若い映画監督が出てきているせいもあるんだろうし、それに加え、年配の人が見れる作品も増えている。映画ソフトがバランスよく立ち上がってきている気がしていますね。
 それでもぼくは、すべての人が見て喜んでくれるものをつくりたい。きっと欲張りなんでしょうね。映画って見る人の好き嫌いがすごく出る。そのなかでマスに向けてつくるのは本当に難しいですよ。「すっごくおもしろい」っていってくれる人と「なにそれ」という人がいて。テレビのときは視聴率という数字があって、二十パーセント超えれば大ヒット。それで「みんながおもしろいと思ってるんだよ」ということになったんですけど(笑)。でも映画はそういう訳にはいきません。個人個人から反応が来ますから。

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