知念実希人さん

岡崎琢磨さん

同年デビューの2人のトークに、会場は大盛り上がりを見せた

知念実希人×岡崎琢磨トーク&サイン会 レポート

2016.06.15

5月10日(火)に三省堂書店池袋本店で、『仮面病棟』の発行40万部突破を記念して、著者の知念実希人さんと、岡崎琢磨さんの人気若手ミステリー作家2人によるトーク&サイン会が実施されました。
現役の医師でもある知念さんは、密室ミステリー『仮面病棟』が大ヒット。岡崎さんは宝島社より発売の『珈琲店タレーランの事件簿』で衝撃のデビュー、ブレイクを果たしました。
プライベートでも食事を共にするなど親交の深い2人の軽快なトークに、会場は何度も爆笑に包まれました。
イベント終了時には2人によるサイン会も実施され、多くのファンが列をつくるなど大盛況に終わったこの日。ファン垂涎のトーク内容を少しだけ公開します!

――最近、どうですか?

知念 今日はトークショーということですが、普段どおり楽しく話していければと思います。
岡崎 今回はお招きいただきありがとうございました。今日のために打ち合せをしようと二人で飲みに行ったんですが……。
知念 何も決まりませんでしたね(笑)。午前2時まで飲んでたのに。早速ですが岡崎さんは来月に新刊が出るとか。
岡崎 急ですね(笑)。昨年7月の単行本以来の新刊で、朝日文庫から『道然寺さんの双子探偵』という新刊が出ます(現在発売中)。このお話は福岡のお寺が舞台なんですが、僕自身がデビュー前にお寺の手伝いをしていた経験を活かして書きました。せっかく舞台が地元なので、福岡限定カバーも作っています。よろしくお願いします!
知念 僕も明後日、『優しい死神の飼い方』が光文社文庫から出ます(現在発売中)。初めての「単行本からの文庫化」です。
岡崎 どうでした、初の文庫化作業は?
知念 結構恥ずかしいです。三年前に書いたものだから、もう一回読んでみるととても直したくなるんですけど、時間がない。一週間くらいで終わるかなと思ったら、一ヶ月半かかりました(笑)。
岡崎 一ヶ月半もあったら、下手すると新作が書けますよね。
知念 そうですね。最近は一か月半で新作を一つ書かないといけないペースです。
岡崎 今年は何冊出されます?
知念 新刊が五、いや六冊出ます。『仮面病棟』の続きもあるので。去年も六冊ぐらいだったんですが、最近はけっこうスケジュールもタイトになってしまって……。
岡崎 依頼を断れないことってありますよね。
知念 岡崎さんは断るのが苦手そうだね(笑)。「岡崎さんに来年書いてもらうんです」って複数の編集者さんから聞いてます。
岡崎 あはは(笑)。知念さんも相当なペースで書かれていますよね。
知念 本当に速い方にはかなわないですよ。パソコンの前に座ったら、もうその時点で最初から最後まで全部文字が頭の中に浮かぶっていう作家さんもいるんですから。化け物ですよね。ちょっと対抗できない(笑)。
岡崎 知念さんはどういう風に物語を作ってるんですか?
知念 僕は最初とラストシーンとテーマを決めたら終わりです。あとは書き始める。
岡崎 それもすごいですよね。
知念 だけど、ラストとテーマしか決まっていないとなると、ある意味恐ろしいです。途中で失敗したら大変なことになる。時々ね、途中でつまって本当に困るときがあります。岡崎さんはプロットを完全に作ってから書き始めるでしょ?
岡崎 そうですね。僕の場合は話をしっかり組み立ててからじゃないと書き出さないです。確かに、『仮面病棟』はがっちり組んだというよりは、どんどん書き進めていった勢いのようなものを感じました。
知念 頭の中の映像的なイメージを書き写していくんですが、途中でぶつ切りになってしまう場面もあって。そこをどう繋げようかな、と考えていると眠れなくなり……。
岡崎 寝る前にアイディアを探すと全然眠れないですよね。
知念 けど、寝ちゃうと忘れる。だから、思いついたらすぐ書いてます。
岡崎 この仕事って寝てる間以外はずっと作品のことを考えてる気がします。
知念 ストレス解消法とかありますか? 僕はひたすらジムへ行ってスパーリングやってます。岡崎さんはコーヒーにこだわったりしているの?
岡崎 今年コーヒーマシンを買ったんですが本当においしいですよ。調子のって飲んでたら胃が痛くなっちゃいましたが(笑)。

――それぞれのデビュー

知念 話は戻りますが、新作はお寺の話なんですよね。実家がお寺なの?
岡崎 正確には父親の実家がお寺で、お寺の仕事の空き時間で小説を書いていたんです。デビューしてからもしばらくはお寺で働いていました。
知念 もしデビューできなかったら今頃坊主だった可能性もあったの?
岡崎 そうですね(笑)。今回のお話は語り手はお坊さんなんだけど、主人公は中学生の双子です。
知念 京都本大賞みたいなご当地の賞は福岡にもあるんですか?
岡崎 賞はないと思うんですけど、秋に福岡の書店さんがやるイベント(BOOKOKA)があって、以前もトークショーに出させてもらいました。地元愛が強い土地柄なのでちょっと特別なカバーも作らせていただきましたが、どこで買っていただいても、もちろん、平等にありがたいです。
知念 京都が舞台のデビュー作『珈琲店タレーランの事件簿』は、京都本大賞をとる前から売れてましたよね。
岡崎 当時はちょうど京都ブームが起きていたんです。記念すべき第一回目に受賞させていただけて、大変ラッキーでした。
知念 僕らはデビューが同じ2012年。『タレーラン』の文庫をいいなあと思いながら見ていました。僕はデビュー当時はなかなか単行本が売れなくて、三作目まではまったく重版がかかってないですから。最初からいきなり売れたから、びっくりしたでしょ?
岡崎 何が起きてるのかわかりませんでした。他人事のようだった。
知念 急に売れ出すと怖いんですよね。
岡崎 売れ始めたときの勢いは凄いですね。
知念 僕も『仮面病棟』発売直後はまったく話題にならなかったのに、半年後に急に売れ出して、何が起こっているのかわかりませんでした。北海道の書店さんからじわじわと火がついて、啓文堂さんの文庫大賞で一位がとれて、そこから爆発してくれた。ありがたいし、嬉しいです。
岡崎 知念さんは新潮文庫nexの「天久鷹央」シリーズも好調ですが……。
知念 ありがたいことにあれで名前を認知してもらえた気がします。
岡崎 お医者さんとしての知識が存分に盛り込まれていて、本領発揮でしたね。
知念 「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」の選考当時から島田荘司先生にお世話になってるんですけど、僕の受賞作はあんまり本格ミステリーじゃなかったんです。島田先生は本当は本格ミステリーの作品に賞をあげたかったはずなのに、僕を選んで面白いと言ってくださった。僕としては罪悪感があって、「本格ミステリーが書きたい」と思って書いたのが、あのシリーズです。医療を使って本格ミステリーを書いたらこんな感じですよっていうのを出したかった。岡崎さんは、当分ライトミステリーが続きそうですか?
岡崎 どうでしょうか。ライトミステリーも続けつつ、ちょっとずつ……

これから2人のトークは、執筆に関するこだわりやテクニック、そしてミステリー界の未来についてへとさらなる盛り上がりを見せます。気になるトーク全編は「J-novel2016年7月号」本誌または「ジェイ・ノベルプラス」をチェック!

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