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天野暢子・高橋晋平

『プレゼンは資料作りで決まる!』刊行記念対談 天野暢子さん×高橋晋平さん(1)

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プレゼン名手が教える「即決定!の法則 1」~「GHOUS(ガウス)」の視点


――プレゼンの達人の天野暢子さんが新しい本を刊行されました。
その天野さんのところに、おもちゃを開発している高橋晋平さんが遊びに来ました。
プレゼン上手のおふたりに、プレゼンの気になることをいっぱい聞いちゃいます。

高橋: はじめまして! 天野さんは「プレゼン・コンシェルジュ」として活動なさっているんですよね? 聞き慣れない言葉ですが……?

天野: 「プレゼン・コンシェルジュ」というのは、私が考えた造語なんです。“プレゼンに関するいろんなことを網羅してお世話しますよ”という意味で名乗っています。「プレゼン・コンシェルジュ」は、世界に私ひとりしかいないんですよ。

高橋: そうなんですね。具体的に、普段はどんなお仕事をなさっていますか?

天野: 大きく3つに分けられます。プレゼンをテーマに、(1)企業での研修、(2)大学や専門学校での講義、(3)個人を対象にしたマンツーマンでのコーチ。また、今回のように書籍を執筆したりもします。高橋さんは玩具メーカーにお勤めなんですよね。

高橋: はい。おもちゃの企画開発の仕事に携わっています。その中でも一風変わった変なおもちゃ、バラエティ玩具を10年間つくり続けている感じです。

天野: ヘンなおもちゃ、ですか?

高橋: 一番売れた商品でいうと、「∞(むげん)プチプチ」という、ずっとプチプチできるおもちゃがあります。これは日本と海外含めて累計335万個を販売しました。最近ではガシャポンと呼ばれるカプセル自販機の玩具で、「猫背」という商品を出しています。猫背の猫のフィギュアをパソコンの前に飾って、それを見るたびに、“やばい、自分は背筋を伸ばさなきゃ”ということで、姿勢がよくなる玩具です。こんなふうに、いろいろな切り口のおもちゃをつくっています。また、アイデア発想法に関する研究もしています。

天野: ご著書も出していらっしゃいますよね。

高橋: はい。講演をしたり、著書を出させていただいたりもしています。

――高橋さんはたくさんのプレゼンをなさっていると思いますが、プレゼンに関して何かお悩みはないですか?

高橋: 実は、私は企画のプレゼンでボツることが本当に多いんですよ。なかなか企画が通らないんです……。決裁者の意思決定を導き出せていないということなのですが、スムーズに決裁をもらうにはどうしたらいいんでしょう?

天野: プレゼンでボツることが多い方は、「GHOUS(ガウス)」が欠けているのかもしれませんね。

高橋: ガウス……ですか?

プレゼンの名人は「GHOUS(ガウス)」を大事にする

天野:「GHOUS(ガウス)」というのは、ゴール(Goal)の「G」、ホスピタリティ(Hospitality)の「H」、オリジナリティ(Originality)の「O」、ユーザビリティ(Usability)の「U」、シンプル(Simple)の「S」の頭文字をとった言葉で、私のオリジナルの造語です。なかなか意思決定につながらないのは、「GHOUS」の視点がプレゼンに盛り込まれていないのかもしれません。

高橋: ぜひその「GHOUS」の視点について教えてください。

天野: はい。ではまず「ゴール」から。これは「目標意識」のことです。高橋さんはいろいろなプレゼンを経験されてきたと思いますが、何をゴールにやってこられましたか。たとえば、大ヒットした「∞(むげん)プチプチ」のときは何をゴールになさいましたか。

高橋: 「商品化されること」をゴールにしました。

天野: それが最終目標ですよね。

高橋: はい。

天野: では、最初の社内プレゼンのときには何が目標でしたか?

高橋: そうですね……最初は「最終プレゼンに提案をさせてもらうこと」を目標にしていました。

プレゼンのゴールは1つじゃない!

天野: 第1関門を突破したい、ということが最初の目標だったんですよね。【各段階(関門)でのゴールを毎回毎回、確認していく】ことが大事なポイントです。最終の意思決定まで5つの関門があるのであれば、いきなり5つ目のゴールを目指すのではなく、1つ目のゴール、2つ目のゴール……と1段階ずつゴールすることを意識してください。最初から5段階目を狙っても、うまくいかないものです。

高橋: それぞれのゴールをクリアするから、最終ゴールも決められるということですね。

天野: そうです。次に「ホスピタリティ(気くばり)」を意識することが大切です。当たり前のことですが、意思決定者は、自分がイヤな思いをするような提案は通したくありません。なので、「その提案を通すと、意思決定者にいいこと・便利なことがある」提案をするという視点も必要になります。

高橋: 確かにそうですね。

「自分らしさ」の出し方は?

天野: 3番目の「オリジナリティ」は「自分らしさ」ということです。高橋さんは、この部分を意識なさっているから、「∞(むげん)プチプチ」などこれまでのプレゼンが成功していらっしゃると思います。ただ、多くの方は自分らしさというのがなかなか出せていません。高橋さんは「自分らしさ」をどんなふうに意識なさっていますか。

高橋: 一風変わった商品をつくりたいという目標があるので、プレゼンでも笑いを取ることは意識していますね。ほかの真面目なプレゼンと比較すると、ちょっと変わったことを楽しんでもらえるようにしています。

天野: なるほど。言うならば「ストレンジ高橋」とか「笑いの高橋」とか、毎回、そういう路線を狙っていらっしゃるということですね。

高橋: はい。

天野: プレゼンで採用されたい方は、そうした「自分らしさ」を持っていただきたいなと思います。それを貫いていくと個性になっていきますから。ただ、1回行っただけですとアクシデントみたいなことになりますので、「自分らしさ」を貫き、継続していくことも大事になります。

高橋: 3つ目は「ユーザビリティ」ですね。

「気くばりできない相手とは仕事をしたくない」

天野: これは「使いやすさ」ということです。具体的には、企画書、提案書、スライドというプレゼン資料が、相手(意思決定者)の使い勝手のいいものになっているかということです。たとえば、高橋さんはプレゼンの現場ではどんなサイズの資料をお配りになりますか。

高橋: 基本はA4サイズの資料ですね。

天野: そうですよね、それはOKです。ただ、もしもプレゼンの現場で、ポスターサイズ・重さ1キロの企画書を出されたら、持って帰れないし、折りたためないし、相手(意思決定者)はとても困りますよね。まあ、それは極端な例ですが、受け取った人がページがめくりやすいとか、持ち運びやすいとか、コピーしやすいとか、そういったところにも配慮が必要です。

高橋: そういう気くばりがある相手と、相手も仕事をしたいということですね。

天野: そうです。ビジネスの現場では「気がきいて当たり前」と考えてください。こちらから言わないとA4サイズの資料にしてくれないということでは、この人と仕事をするのは厳しいと思われてしまいます。気くばりがあるかどうかも、意思決定には必要な要素です。

高橋: はい。

天野: そして最後に「シンプル」があります。ところで、高橋さん、「∞(むげん)プチプチ」をひと言で言うと、どんなおもちゃですか?

高橋: あの……、好きなだけプチプチ指でつぶせるおもちゃです。

天野: シンプルですね(笑)。こういう伝え方が大事なんですよ。「それはプラスチックでできていて、重さが××グラムで、穴は何個あいていて」と言われても、そのおもちゃの楽しさ・本質は全然伝わらないですよね。今、高橋さんがおっしゃったように、ひと言でシンプルに伝えることで、受け取る側もすぐ理解できて、迅速に決定をしやすいということになると思います。

コストがわからなければ決められない

高橋: 天野さんのお話をうかがって、「GHOUS」の重要性がよくわかりました。この視点が「即!決定」のポイントですね。あとは、自分自身も気をつけなければいけないと思ったのは、「コスト(費用)」の視点です。

天野: そうです。コストは意思決定の大きなポイントになりますね。

高橋: 私自身も、企画の持ち込み提案などのプレゼンを受けることがあります。そのとき、「これをつくるには○○万円かかります」という、コスト感が欠けていることが多いように思います。面白そうな企画だけれども、提案書に書いてある価格でつくれるわけないよ、という企画書も多いんです。いくら面白い企画でも、きちんとコストに言及していなければ、実現できるかどうかわからず、決裁不能になってしまいます。その点も大事な観点だと思いました。

プレゼンの話はまだまだ尽きません。
次回は「自分らしさ」の出し方についてお話が広がっていきます。

【プロフィール】
天野暢子(あまの・のぶこ)
広告代理店、スキー場コンサルティング会社、ゲームメーカー広報などを経て、2006年にプレゼンテーションを中心としたコンサルタント「プレゼン・コンシェルジュ」として独立。広島修道大学非常勤講師(プレゼンテーション論)。「広告代理店」「メディア」、広告主」での、「提案する側」「選ぶ側」両方の豊富な経験から、プレゼン資料、企画書、プレスリリース、広告コピー、記事等、用途に応じた資料を作り分ける。テレビのニュース番組の校閲にも長年関わってきたため、テレビにおける一瞬の見せ方、伝え方等の演出手法をプレゼンに応用している。ひと言も説明せず資料だけで通した案件多数。著書『図解 話さず決める!プレゼン』(ダイヤモンド社)は台湾、韓国、中国で翻訳。ほかに『プレゼンはテレビに学べ!』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『プレゼン力がみにつくPowerPoint講座』(翔泳社)など。

高橋晋平(たかはし・しんぺい)
1979年生まれ。秋田県北秋田市出身。東北大学大学院修了。2004年、株式会社バンダイ入社。入社以来、主に大人向けバラエティ玩具の企画開発を担当し、現在井はカプセル玩具「ガシャポン&Reg;」の商品企画開発を担当。国内外累計335万個を販売した「∞(むげん)プチプチ」をはじめ、さまざまな玩具商品を企画開発し、ヒットさせてきた。独自の発想法「アイデアしりとり」を提唱・実践し、2013年には「TED×Tokyo」に登壇。そのプレゼンテーション「新しいアイデアのつくり方」が高く評価されている。JAPAN MENSA会員でもある。著書に『アイデアが枯れない頭のつくり方』(阪急コミュニケーションズ刊)、『∞(むげん)アイデアのつくり方』(イーストプレス刊)がある。