わたしの好きなおじさん

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  • A6判304ページ
  • 2013年06月05日発売
  • 本体価格 571円+税
  • ISBN 978-4-408-55132-6
    • 在庫あり
わたしの好きなおじさん

内容紹介

なぜか惹かれてしまう“おじさん”という生きもの

OLが英会話教室で出くわした、仕事ができると噂の課長。フリーライターが取材先で知り合った、恥ずかしがり屋の大学教授。元AV女優が人生最後の旅で声をかけられた、自称英国諜報部員……。人生に行き詰まりを感じている妙齢の女性6人と、個性豊かなおじさんたち。彼らの関わりを、ほほえましく、切なく、そしてエロティックに描く。文庫オリジナル恋愛小説集。

【本文紹介/ 「妖精おじさん」より】
ヨネちゃんの元追っかけ仲間の田所さんは、わたしより一つ下の三十八歳で、独身のままいまだに歌舞伎役者の追っかけをしているらしかった。大手メーカーで経理の仕事をしている。その上司の北別府さんは、五十二歳のバツイチ。経理部長。部下の田所さんに娘のようなため口をきかせていて、顔がジャムおじさんに似ている。見た目はどこにでもいる太った管理職のおっさんだけれど、田所さんだけでなく、社内中の女性社員たちから慕われていて、毎晩夕食の誘いで引っ張りだこらしい。

確かに、北別府さんはとても好感の持てるおじさんだった。わたしもヨネちゃんもフジコちゃんも、すぐに彼との会話に夢中になった。とにかく頭の回転がはやく、また話題の守備範囲も広くて、彼が口にすることの全てが興味深くて面白かった。フィギュアスケートについても歌舞伎についても、相当ディープなところまで話についてくる。けれど、一方的に知識をひけらかすようなことは決してしない。会話の流れが人の悪口に向かいかけると、絶妙なさじ加減で修正し、誰かと誰かの意見が衝突しそうになったときは、かなりはやい段階で察知して、さりげなく迂回路に誘導する。誰かのグラスが空けばすかさずワインを注ぎ、誰かが寒そうにしていればすぐに気づいて店員に室温を調整させる。気配りは完璧。そのうえ話が面白い。また、よく通るバリトンの声もすばらしい。女子社員に人気なのも大きく頷けるというものだ。